THANKS WOMEN’S GOLF TOUR 8th GAME 2023年2月3日 グランディ浜名湖ゴルフクラブ Text:コヤマカズヒロ Photo:矢田部裕 有原裕晶 今年もハードな セッティングで開催 ちょうど一年前に行われた第5回大会に続き、8回目となるTWGT(THANKS WOMEN’S GOLF TOUR)は、グランディ浜名湖ゴルフクラブで開催された。昨年は海からの強風と高速グリーンが大いに選手を苦しめ、出場選手の平均スコアが「79・44」とスコアが伸び悩む展開となった。 昨年大会では、ベテランの金田久美子選手が出場したことも話題になったが、この年11年ぶりのツアー優勝を果たした彼女でさえ、グランディ浜名湖ゴルフクラブのグリーンに苦しみ、「80」を叩いている。 それだけ厳しいコンディションだったわけだが、今年はこの時期としては年に2、3日あるかないかという凪のコンディションで、吹いてもそよ風程度という好天に恵まれた。 しかし、グランディ浜名湖ゴルフクラブ特有の高速グリーンの脅威がなくなったわけではない。試合当日のグリーンは、これほど仕上げられるのかとTWGT和田泰朗代表が称賛するほどの高速グリーンで、スティンプメーターは昨年を上回る11・8フィートという、レギュラーツアーに匹敵するハードな仕上がりになった。 これだけ速いグリーンであれば、傾斜のきついグリーンの中でピンを切る位置は限られる。グリーン自体は大きくても、ピン周辺の比較的傾斜が穏やかな狭い場所にボールを運ばなければならない。必然的にショットのブレや距離感の誤差を許さないセッティングとなった。 和田泰朗代表の優勝スコア予想は、3アンダーから4アンダーとやや控えめ。「ステップ・アップ・ツアー以上、レギュラーツアー未満のセッティング」とは、TWGTの掲げるコンセプトだが、今大会はまさにレギュラーツアー同様のアイアン精度を求められる舞台となった。 常に上を見据え 実力をつける選手たち TWGTの看板選手であり、常に1、2を争うサポーター数を獲得する笹原優美選手もそんなセッティングの罠にハマったひとりだ。スタートホールの二打目を左サイドの池に落としてダブルボギーを叩き、以降もなかなか流れを作ることが出来なかった。 昨年、最終プロテストを戦った笹原選手は、改めてスイング改造に着手しているのだという。ツアー参戦経験を持つ彼女のようなキャリアを持つ選手でさえ、さらに向上するためにリスクを負ってチャレンジしている。 常に高い現場人気を誇る幡野夏生選手も、出場選手の中でも屈指の実績を持ちながら、いつもスイングコンシャスで新たな取り組みを続けている選手だ。聞くところによると、様々な著名コーチを訪ねて、アドバイスを得ているらしい。練習場でも、スイング動画をチェックしながら、スティックや練習器具などを駆使して練習しており、闇雲にボールを打っていない。他の誰よりも強い目的意識を持って練習しているのが、よく分かる選手だ。 すでに培ってきたスイングに手をつけるのは大きなリスクが伴う。成功する保証はなく、むしろ失敗するリスク、あるいはプロテストまでに間に合わないリスクのほうが高いかもしれない。しかし、それでもそれに取り組んで、成功した者だけが次のステージに進むことが出来る。この二人の選手を見ていると、目的意識が強く、それをやり続ける選手だけが強くなれるのだということを思い知らされる。 そして、TWGTに参加している二十代の選手たちは、わずかな期間で急に実力が伸びることも少なくない。回を重ねると、みるみる実力をつけている選手にも多く出会う。8回目を数えたTWGTだが、そんなところも感じられてトーナメントとして着実な積み重ねを感じさせる。 TWGTの魅力のひとつであるサポーターとの距離の近さも浸透してきた。繰り返しサポーターになることで、選手と顔なじみとなり、会話に広がりが生まれるようになった。また同じ選手を応援する仲間として、サポーター同士での交流も増えてきた点も興味深い。 最後までわからなかった試合展開 8番ホールでは、距離を230ヤードに設定しワンオン可能な短いパー4となった。 風はややフォローで、多くの選手にとってはドライバーでは大きいため、フェアウェイウッドを選択するケースが多かった。花道を狙って、あわよくば転がってグリーンオンすればOKというリスクを避けた攻め方だ。 こうしたセッティングではしっかりとバーディー、あわよくばイーグルを狙いたい。 スタートの1番ホールでダブルボギーと躓いた浅見優華選手が、その後はしぶとくパーを重ねて、8番で起死回生のイーグルを奪取。見事、10万円のイーグル賞を手中にした。 トーナメントを終始リードしていたのが、木村円選手だ。昨年の大会で初出場。173センチという長身を活かしたビッグドライブが持ち味で、レギュラーツアー参戦経験もあるプレーヤーだ。前半で3つのバーディーを奪い、ハーフターン後の3番でボギーを叩いたものの、終盤で3つのバーディーを重ねて、4アンダーでフィニッシュ。2位タイとなった。コースマネージメントにも巧みなところを見せ、まだまだ伸びしろを感じさせるスケールの大きな選手だ。 もうひとり、上位を盛り上げたのがTWGT初出場となった、諸橋愛奈選手。前半は3連続を含む5つのバーディーを奪取。後半はボギーが先行するも粘りのゴルフを見せて、4アンダーでフィニッシュした。 後半に9〜10番、12番でバーディーを奪って優勝争いに食い込んできた同組の平塚亜夢選手、さらに同じ組の河村来未選手も伸ばし、3人の見ごたえある一進一退の攻防が見られた。ワンデイトーナメントであるTWGTで、同組3人が揃って活躍するのは珍しい。 優勝を決めたのは 圧巻の5連続バーディー そんな中、優勝したのは上がり5ホールで、なんと5連続バーディーという離れ技を見せた片山穂夏選手だった。優勝スコアは和田泰朗代表の予想を上回る5アンダー「67」。このコースコンディションの中で堂々のビッグスコアと言えるだろう。 終盤の5つのバーディーはほぼワンピンにつけ、高難度のグリーンはキャディであるお父さんとのコンビで見事に読み切ったという。 片山選手は、TWGT初出場。お父さんがキャディだったことで落ち着いてプレーできたとコメントした。今後のことを聞くと、まだプロテストを受けるかどうかはわからない、という返事が返ってきた。お父さんによると、不調で自信を失っていた時期があり、まだプロを目指すようなマインドセットにはなっていないのだという。 勝負の世界では、身体だけでなく心の負担も決して小さくないのだろう。寂しいことだが、人知れず心折れてしまう選手も数多く存在する。しかし、今回の見事なプレーぶりは、彼女にとって復調のきっかけになるかもしれない。次回以降の出場にも意欲を見せてくれた。 …………………………………… 表彰式では、和田泰朗代表から「毎回これで終わりにしようかと思うほど、大変なことが多い」という言葉も聞かれた。本当に様々な状況を乗り越えられるのは、選手たちに試合を提供したいという、和田代表以下スタッフの思いがあればこそなのだ。多くの人たちの尽力で、第8回大会も盛況のうちに終えることが出来た。 選手とサポーターという独特の仕組みを持つTWGTでは、それに関わる人すべての理解がないととても成立しない。皆それぞれ大変なこともあるが、試合が終われば誰もが開催されてよかったと思える、そんなトーナメントにTWGTは育ちつつある。 本大会を終始リードした11組の平塚新夢(左)、河村来未(中)、諸橋愛奈(右)。河村選手は第3回大会、平塚選手は第6回大会の優勝者としてトーナメントを盛り上げてくれた。諸橋選手は最多バーディー賞を獲得。 優勝は終盤圧巻の5連続バーディーで一気に混戦を抜け出した片山穂夏選手。本大会初出場初優勝となった。 イーグル賞のかかった8番で唯一のイーグルを決めた浅見優華選手。1番のダブルボギーから見事なカムバック。 そしてもう一人本大会を盛り上げてくれたのが木村円選手。長身から繰り出されるビッグドライブでサポーターを魅了した。 TWGT 8th GAMEは総勢66名の選手が参加して開催。 TWGT名物の選手とサポーターのコミュニケーションタイム。企業サポーターのブースでは即売も行われて盛り上がった。 TWGT 9th GAME 6月23日開催! THANKS WOMEN'S GOLF TOUR第9回大会が、2023年6月23日(金)に愛知県豊川市の平尾カントリークラブにて開催されます。詳細及びサポーター登録は下記サイトからお願いいたします。 https://www.twgtour.com/